「役員貸付金・仮払金はなぜ危険?銀行融資と税務調査への影響を解説」

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経営財務
作成日: 2026.08.12 更新日: 2026.08.12

役員貸付金・仮払金はなぜ危険?銀行融資と税務調査への影響を解説

中小企業の決算書を分析するとき、私たちが必ず確認する勘定科目があります。

その代表的なものが、「役員貸付金」と「仮払金」です。
「昔から残っているので、そのままにしている」
「社長が会社から一時的にお金を借りているだけ」
「何に使ったか分からない支出を、とりあえず仮払金にしている」
こうしたケースは珍しくありません。

しかし、多額の役員貸付金や長期間精算されていない仮払金は、金融機関から見れば会社の財務内容を評価するうえでマイナス材料となる可能性があります。

さらに、内容によっては税務調査でも確認されることがあります。

今回は、なぜ役員貸付金・仮払金が問題になるのか、銀行融資への影響や税務上の注意点、そして残高を解消していく方法について解説します。

【そもそも「役員貸付金」「仮払金」とは?】
まず、それぞれの意味を確認しておきましょう。

◆仮払金とは
仮払金とは、お金を支出したものの、使用目的や最終的な金額などがまだ確定していない場合に、一時的に使用する勘定科目です。

たとえば、
・出張前に旅費を概算で渡した
・経費になる予定のお金を先に支払った
・支出はあったものの勘定科目がまだ確定していない
といった場合に使用します。

本来は一時的な勘定科目であるため、内容が確定した段階で速やかに精算することが基本です。

◆役員貸付金とは
役員貸付金とは、会社が社長やその他の役員にお金を貸している状態です。
役員貸付金そのものが直ちに問題になるわけではありません。

問題となりやすいのは、多額の残高が長期間にわたって残っている場合です。

〇なぜ役員貸付金・仮払金が問題になるのか
役員貸付金や仮払金が増えても、通常、それだけで損益計算書上の費用が増えるわけではありません。
しかし、会社から現金は出ていきます。

その結果、
「損益計算書では利益が出ているのに、会社にはお金がない」
という状況をつくる原因になることがあります。

特に、使途が不明確な仮払金を長期間放置すると、月次試算表を作成していても会社の正確な収益状況を把握しにくくなります。

毎月しっかり予実管理をしていても、その前提となる会計数字が実態を反映していなければ、経営判断を誤る可能性があります。

【銀行は役員貸付金・仮払金をどう見るのか】
金融機関が決算書を見る場合、役員貸付金や長期間残っている仮払金について、その内容や回収可能性を確認することがあります。

特に銀行が気にするのは、次のような点です。
① 会社のお金が役員個人に流れていないか
銀行融資には、それぞれ資金使途があります。
たとえば、仕入代金や人件費などに使用する「運転資金」として融資を受けたにもかかわらず、その資金が役員個人への貸付に流れていれば、銀行としては当然その理由を確認します。
場合によっては、新たな融資判断に影響する可能性もあります。

② 本来は費用となるものを資産計上していないか
銀行がもう一つ警戒するのが、利益を実態より良く見せるための処理です。
本来は費用として処理すべき支出を仮払金などの資産勘定に残せば、その期の費用は少なくなり、帳簿上の利益は大きく見えます。
そのため、多額の仮払金が長期間残っている場合、金融機関から内容について説明を求められることがあります。
決算書上では黒字であっても、資産の中身まで確認すると実態が異なるということもあります。

③ 使途不明の資金が積み上がっていないか
事業承継の際にも注意が必要です。
たとえば、先代社長の時代から役員貸付金や仮払金が積み上がっており、後継者が会社を引き継いだ時点では、「そもそも何のお金なのか分からない」ということがあります。
こうした状態になると、解消するにも時間がかかります。
事業承継を予定している会社は、株式や借入金だけでなく、役員貸付金や仮払金についても早い段階で整理しておくことが重要です。

【銀行は決算書を「実態」で評価する】
「役員貸付金を銀行に説明すると評価が下がるのではないか」
と心配される経営者もいらっしゃいます。

しかし、銀行は決算書に記載された数字をそのまま評価するだけではありません。
資産の内容や回収可能性などを確認し、実態に合わせて財務内容を評価することがあります。

たとえば、回収可能性に疑問がある役員貸付金や、内容の分からない仮払金について、資産価値を慎重に評価されることがあります。

だからこそ重要なのは、隠すことではありません。
「なぜ発生したのか」「現在いくら残っているのか」「今後どう解消するのか」
を説明できる状態にしておくことです。

特に事業承継や経営改善に着手したタイミングは、過去から残っている問題を整理し、金融機関に改善方針を説明する良い機会になります。

【役員貸付金・仮払金は税務調査でも注意が必要】
注意が必要なのは、銀行融資だけではありません。
長期間精算されていない仮払金などについては、税務上、その実態が確認されることがあります。

たとえば、実態として会社から役員への貸付であれば、役員貸付金として整理し、適正な利息について検討する必要が生じることがあります。

また、実質的に役員へ経済的利益を与えたものと判断された場合には、役員給与として取り扱われる可能性もあります。

役員給与と認定された場合、その内容によっては法人税上の損金として認められない一方、役員個人側では給与として課税関係が生じることがあります。

金額が大きければ、会社・個人双方への税負担も大きくなる可能性があります。
長期間残っている仮払金を「とりあえずそのまま」にしておくことは避けた方がよいでしょう。

具体的な税務上の取り扱いについては、必ず顧問税理士等に確認してください。

【役員貸付金をどうやって解消するのか】
すでに多額の役員貸付金がある場合、一度に解消することが難しいケースもあります。
重要なのは、放置するのではなく、現実的な返済・解消計画を作ることです。

代表的には、次のような方法が考えられます。
① 役員個人から会社へ返済する
最も基本的な方法です。
一括返済が難しければ、役員個人の資金状況を踏まえて計画的に返済していくことを検討します。

② 役員借入金との相殺を検討する
同じ役員について、会社側に「役員借入金」が存在する場合には、一定の条件のもとで相殺を検討できるケースがあります。

③ 役員個人が所有する資産の売却を検討する
役員個人が所有し、会社の事業に必要な資産がある場合には、適正な価格で会社へ売却し、その代金と貸付金の整理を検討する方法もあります。

④ 役員退職金との関係を検討する
将来的に役員退職金を支給する予定がある場合には、そのタイミングで貸付金を整理する方法が検討されることもあります。

ただし、いずれの方法も税務上・法務上の取り扱いを確認する必要があります。
実行する際には、必ず税理士などの専門家と相談してください。

【解消するだけでなく「これ以上増やさない仕組み」をつくる】
役員貸付金や仮払金は、残高を減らすだけでは根本的な解決になりません。
同じことを繰り返さない仕組みをつくる必要があります。

特に仮払金については、仮払いそのものを禁止する必要はありません。
大切なのは、精算期限とルールを明確にすることです。

たとえば、
・出張後2営業日以内に精算する
・領収書・請求書を必ず提出する
・月末時点の仮払金残高を経理担当者が確認する
・長期未精算のものは経営者へ報告する
といったルールを決めておきます。

そして何より重要なのは、社長自身がルールを守ることです。
経営者が精算を後回しにしていれば、社員にだけ厳格な運用を求めても定着しません。

正確な月次決算を行うためにも、経営者自身がお金の管理ルールを徹底することが大切です。

【今すぐ確認したい3つのポイント】
① 直近の決算書・試算表を確認する
貸借対照表を確認し、「役員貸付金」「仮払金」に残高がないか確認しましょう。
残高がある場合には、前年から増えているのか、減っているのかも確認します。

② 残高の中身を洗い出す
いつ、誰に、何の目的で支出したお金なのかを確認します。
「内容が分かるもの」と「内容が分からないもの」に分けるだけでも、問題点が見えてきます。

③ 解消計画と精算ルールをつくる
既存残高をどのように減らすのかを決めると同時に、新たな役員貸付金・仮払金を増やさないためのルールを整備します。
この2つをセットで行うことが重要です。

【まとめ|役員貸付金・仮払金は早めの整理が重要】
役員貸付金や仮払金は、中小企業の決算書では珍しくない勘定科目です。
しかし、長期間、多額の残高が残っている場合には注意が必要です。

ポイントを整理すると、
・役員貸付金・仮払金は金融機関の融資判断に影響する可能性がある
・私的流用や不適切な会計処理を疑われる要因になり得る
・税務調査でも実態を確認される可能性がある
・隠すのではなく、発生原因と解消計画を説明できる状態にする
・残高の解消と同時に、今後増やさないための精算ルールを整備する
ことが重要です。

決算書には、会社の業績だけでなく、経営者のお金に対する姿勢も表れます。
役員貸付金や仮払金が残っているのであれば、「いつか整理しよう」と先送りせず、まず中身を確認するところから始めてみてください。

株式会社グロウアップパートナーズでは、決算書の実態を踏まえた財務分析・財務改善、金融機関への説明、月次管理の仕組みづくりなどを支援しています。

「役員貸付金が多額に残っている」
「銀行から貸付金について指摘された」
「どうやって解消していけばよいか分からない」

といった段階でも、お気軽にご相談ください。

なお、具体的な会計・税務処理については、顧問税理士等の専門家にもご確認ください。

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