「2025年度補正予算案から読み解く 中小企業支援策の全体像と今後の補助金活用の方向性」

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補助金
作成日: 2025.12.04 更新日: 2025.12.22

2025年度補正予算案から読み解く 中小企業支援策の全体像と今後の補助金活用の方向性

政府より2025年度補正予算案が公表され、中小企業・中堅企業の成長投資を後押しする大規模な支援策が示されました。
人手不足、物価高、最低賃金の上昇など、経営環境が大きく変化する中で、「省力化」と「賃上げ」を同時に進めながら成長投資に踏み出す企業を支援することが、今回の補正予算の大きなテーマとなっています。

中でも注目されるのが、以下の2つの施策です。
1.中堅等大規模成長投資補助金(4,121億円)
2.中小企業生産性革命推進事業(3,400億円)

本記事では、これらの制度の概要と活用の視点について整理します。

1.中堅等大規模成長投資補助金
― 地域経済を牽引する成長投資を後押し ―
本補助金は、補正予算案において4,121億円が計上され、これまで以上に大胆な設備投資を支援する制度です。
単なる設備更新にとどまらず、省力化・生産性向上・賃上げの同時達成を目的とした点が特徴です。

(1)大規模成長投資補助金
今年度からはスタートアップ企業も対象に含まれ、支援範囲が拡大しています。
予算規模も前年から1,000億円以上の増額が見込まれており、政府の強い後押し姿勢がうかがえます。

【主な要件・対象】
・従業員2,000人以下の中堅・中小企業(みなし大企業を除く)
・共同申請が可能
・投資額10億円以上(税抜・設備費中心)
事業終了後3年間において、従業員1人当たり給与総額の年平均上昇率が4.5%以上

【補助内容】
・補助上限額:最大50億円
・補助率:原則1/3以内(特例で1/4)
・主な補助対象経費
工場の新設・拡張
機械装置・製造ラインへの投資 等

(2)地域企業経営人材確保支援事業給付金
大企業等で経験を積んだ経営人材を、地域の中堅・中小企業が採用・活用するための人件費給付制度です。
金融庁・経済産業省が連携し、REVICが運営する「REVICareer」を通じて実施されます。

【対象】
・REVICareerを通じて人材マッチングを行う中堅・中小企業
・大企業で経営・マネジメント経験を有する人材

【給付内容(主な類型)】
・転籍型:給与等の30%(上限 年間約450万円)
・兼業・副業型:支払給与の30%(上限 年間200万円)
・在籍出向型:負担分の30%(上限 年間200万円)

経営人材の確保を通じて、企業の成長スピードを高めることが期待される制度です。

2.中小企業生産性革命推進事業
― 幅広い企業が活用できる総合支援パッケージ ―
もう一つの柱が、3,400億円が計上された「中小企業生産性革命推進事業」です。
複数の補助金・支援策を包括した総合パッケージで、企業の成長段階に応じた活用が可能です。

【主な支援制度】
・中小企業成長加速化補助金
売上100億円を目指す成長志向の企業向け。設備投資や拠点整備を支援。
・デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)
DX、AI活用、業務効率化、サイバーセキュリティ対策などを支援。
・小規模事業者持続化補助金
販路開拓、店舗改装、Web制作など、幅広い小規模事業者を対象。
・事業承継・M&A補助金
事業承継、M&A後のPMI、専門家活用等を支援。

【総合的ソフト支援】
賃上げ、インボイス対応、国際取引環境の変化などに対する実務支援。

3.今年度の注目点
― ものづくり補助金の位置づけ変更 ―
今回の補正予算では、「ものづくり補助金」は中小企業生産性革命推進事業の枠外となり、
「革新的製品等開発や新事業進出支援」枠として約1,200億円規模で別計上されています。
廃止ではなく、新事業進出を重視した制度設計への見直しが想定されており、要件や審査基準が変更される可能性も考えられます。

なお、現行のものづくり補助金(第22次公募・2026年1月30日締切)を検討している場合は、早めの対応が重要です。
また、中小企業省力化投資補助金(1,800億円)については、来年度も引き続き有力な制度となる見込みです。

4.補助金活用に向けた考え方
今回の補正予算に共通するキーワードは、省力化・賃上げ・人材確保・デジタル化・新規事業です。

公募要領の詳細は今後公表されますが、採択の可否は「公募開始後の準備」ではなく、
早い段階で事業構想や投資方針を整理できているかどうかで大きく左右されます。
補助金を単なる資金調達手段としてではなく、自社の中長期的な成長戦略を整理する機会として活用することが重要です。

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