「少額減価償却資産の特例が拡大へ 30万円未満から40万円未満に引上げ 中小企業の設備投資判断が変わります 令和8年度税制改正大綱において、」

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作成日: 2025.12.24 更新日: 2025.12.24

少額減価償却資産の特例が拡大へ 30万円未満から40万円未満に引上げ 中小企業の設備投資判断が変わります 令和8年度税制改正大綱において、

令和8年度税制改正大綱において、中小企業の設備投資を支援する「少額減価償却資産の特例」について、重要な見直しが示されました。

本記事では、制度の基本から今回の改正内容、実務上の注意点までを分かりやすく解説します。

◆少額減価償却資産の特例とは
少額減価償却資産の特例とは、正式には「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といい、中小企業や個人事業者が取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合、取得した年に全額を損金(必要経費)として計上できる制度です。

通常、パソコンや機械設備などは、耐用年数に応じて数年に分けて減価償却します。
しかし、この特例を使えば、購入した年に一括で経費化できるため、
・課税所得の圧縮
・節税効果
・資金繰りの改善
といったメリットがあり、多くの中小企業に活用されてきました。

◆通常の減価償却との違い
通常の減価償却では、取得価額が10万円以上の資産については、耐用年数に応じて毎年少しずつ費用計上を行います。
そのため、資産を購入した年に全額を経費にすることはできません。
一方、少額減価償却資産の特例を利用すると、取得した年に全額を経費計上できるため、設備投資を行った年度の税負担を軽減することが可能になります。

◆対象となる資産と年間上限
本特例の対象となるのは、取得価額30万円未満の減価償却資産です。
ただし、重要な制限として、1事業年度あたりの合計額は300万円までという上限があります。
1つ1つが30万円未満であっても、年間で300万円を超える部分については適用できないため、
まとめ買いをする場合には注意が必要です。

【今回の税制改正のポイント】
令和8年度税制改正大綱では、少額減価償却資産の特例について、以下の見直しが示されています。

① 取得価額基準の引上げ
現行:30万円未満
改正後:40万円未満

これにより、これまで対象外だった「30万円を少し超える設備」も、即時に経費化できる可能性が広がります。

② 適用対象法人の見直し
本特例の対象となる中小企業者等のうち、常時使用する従業員数が400人を超える法人は、適用対象外となる予定です。
対象資産の金額は拡大される一方で、対象法人はやや絞り込まれる形になります。

③ 制度の延長
本特例は、2029年(令和11年)3月31日までの3年間延長が示されています。
短期的な制度ではなく、中期的な設備投資計画にも組み込みやすい改正と言えます。

【年間300万円の上限はどうなる?】
取得価額基準が引き上げられる一方で、「年間300万円の上限がどうなるのか」は気になるところです。
結論としては、年間300万円の上限については、改正大綱で見直しの記載はありません。
そのため現時点では、
・取得価額の上限:40万円未満
・年間合計の上限:300万円のまま
と考えるのが、最も安全な解釈です。

◆実務上の影響と注意点
今回の改正により、
・35万円前後の機械設備
・40万円弱のIT機器
・周辺機器込みで30万円超となるパソコン
などが、減価償却せずに一括経費化できる可能性が広がります。

一方で、
・年間300万円の上限管理
・従業員数要件の確認
といった点は、これまで以上に重要になります。

まとめ
今回の少額減価償却資産の特例の見直しは、
・物価上昇を踏まえた実務的な基準引上げ
・中小企業にとって設備投資判断がしやすくなる改正
である一方、無制限に即時償却できる制度ではありません。

特に、「30万円を少し超えるから迷っていた設備投資」を検討している事業者にとっては、判断材料が増える、地味ですが効果の大きい改正と言えるでしょう。
設備投資や購入時期で迷われている方は、制度の適用可否を含め、早めの確認をおすすめします。

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